シティボとインディロックのお部屋

90's以降のオルタナ、インディロック中心のレビューブログ。UKギターロック、グラスゴー、USインディ成分多め。

So Much For The City / The Thrills (1st Album)

★★★★★ 夏の終わりにぴったりの、魔法のような素敵アルバム

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アイルランドはダブリン出身の5ピースバンド、The Thrills(以下スリルズ)が残したファーストアルバム。残念ながらバンドは現在活動休止中。活動再開は期待薄(ソロ作品やプロデュース業やってるっぽいし)。活動休止までにスリルズが残した計3枚のオリジナルアルバムの中で、これが一番思い入れが強くて、一番よく聴いている。夏の終わりにぴったりのちょっとおセンチでノスタルジックなメロディに、憧れの場所への思いと今いる小さな街での出来事を綴った歌がたくさん。遠くアメリカ西海岸への憧れがこのアルバムを生み出した。デビュー前の売れないバンド時代、西海岸で4ヶ月暮らしてみたらやっぱり自分たちが鳴らしたい音楽はこういうやーつ!と再確認してバンドは息を吹き返したらしい。(意を決して訪米してくれて本当良かった)


小さな街で暮らす、スーパースターにはなれそうもないごく普通の若者たちが、ここじゃ無いどこかへ抱いた憧れや今の生活への嫌気や諦め、といったリアルな思いが奇跡のような優しいメロディに包まれて、魔法のような素敵なアルバムになっている。

このアルバムで歌われている、現実からの逃避(物理的か精神的かは問題では無く)って、スリルズのようにそれがダブリンやウェストコーストじゃない僕(そしてあなた)にもごく自然に当てはまることだと思う。スリルズは歌詞が少なめで多くを語ってくれないけど、「君の好きなように想いを馳せるがよろし」と言われているようで、それまた心地よい。

 

「夏の終わり×夕暮れ時」にこんなにハマるアルバムはなかなか無い。8月最終日、夏は絶対スリルズで締めくくりたかったのだ。15年経った今も毎年引っ張り出す。届かなかったあの子への想いも、笑い合った仲間との別離も、無限に感じるほどの時間はあるのに結局どこにも行けなかったもどかしさも、スリルズが全部フラッシュバックさせるのだ。

まだ大人ではないけれど、もう子供でも無い人たちが過ごすであろう忘れられない夏には、きっとこんな音楽がピッタリ。年齢は関係なく、嗚呼!夏が終わっていくよー!!という時期に聴いてほしい。(そしてそれはまさに今だ)

胸がきゅーっとなること、間違いなし。

 

①②⑥⑦⑨⑩⑪がオススメ

 

#1 Santa Cruz

 

#2 Big Sur

 

#3 Don't Steal Our Sun

 

ダブリンといえば、映画 once ダブリンの街角で(サントラも素晴らしい)。薄曇り、くすんだ暗い街の雰囲気が印象的。しかも寒そう。でも聖地巡礼してみたい。